古田任三郎
…………
「風呂場は、遊ぶところではありません。ましてや……」
…………
ザァー
すごい雨である。
ピンポーン
「はい。」
「あ、すいません、今ちょっと車がガス欠でしてねぇ〜。ちょっと雨やどりをおねがいしたいんですが…」
「いいですよ。」
「すいません。私、古田任三郎と言います。よろしくおねがいします。」
「こちらこそ…私『昔泉』といいます…」
「どうかされましたか?」
「実は私も今帰って来た所なんですけど、風呂場で主人が倒れているのを発見したんです。」
「あ、そうでしたか。それはお気の毒に…実はわたしは警察の者です。ちょっとはいけんしてもかまいませんでしょうか。」
「いいですよ。こちらです。」
…………
「あぁこれはだぼくですね。後頭部からおそらくシャワーでどかっと。」
「私もそう思いました。たぶんまどを、バットかなんかでたたきやぶり、風呂場にいた主人とかくとうのすえ、シャワーで…」
「そういうことになるでしょうたしかになぐられたところがたくさんありますからね。」
「となるとこれは男性が犯人でしょうか。」
「そうですね女性じゃそんな力はないですからね…すいませんそれからハンカチをかしてください。風呂場で手をぬらしてしまって…」
昔泉は、ポケットに手をつっこみハンカチを取り出した。
しかし思い直したようにたなの上のタオルをわたした。
…「読者のみなさん、昔泉は決定的なミスを犯しました。考えてみてください。古田任三郎でした。」
…………
「犯人は外部ということになりましたね。しかも男性…」
「ちがいますよ。」
「えっ」
「犯人は外部でも男性でもありません。」
「どういうことです。犯人は内部でしかも女性だというのですか?ということは…」
ここで古田は昔泉を指さした。
「犯人はあなたです。」
「ええっ。気でもちがいましたか古田さん。」
「いや気なんかちがっていませんよ。まずおかしいのは犯人はバットでまどをやぶったことです。」
「なぜですか。」
「バットを持って入ったのなら、かくとうなんかしなくてもバットで殺せばいいんです。なぜ犯人はそうしなかったのか。そうしなかったんじゃなく、できなかったんです。なぜなら犯人はバットなんかはじめから持っていなかったんですよ。」
昔泉はだまってきいている。
「私の推測はこうです。あなたはまず、世間話なんかをしながら夫の口にすいみん薬をしみこませたハンカチでねむらせた。それから風呂場に運び『でき死』をさせた。それからたぶんどっかへでもうめるつもりだったんでしょう。
しかし作業の間にじゃまが入ることをおそれたあなたはあらかじめまどをわっておいた!!そして成功した時には殺人じゃなくゆうかいですまそうとしたんでしょう。
しかし私が来てしまった。
あせったあなたは私を外でまたせ、シャワーで後頭部と体の数カ所をなぐった。犯人は力のある男性でありしかも、『でき死』なんて遠回りなやり方をしない『ぼく殺』という手口をしたてあげた!!
もちろん当のあなたは、ぼく殺で人を殺せるような力は自分にはないと思い『でき死』というやり方にした…というのが私なりの推理ですがいかがでしょうか。」
「立派な推理ですね。しかし納得いきません。私が犯人だというしょうこがないですよ。」
「ありますよ。」
「えっ」
「あなたのポケットの中にあなたの主人をねむらした…すいみん薬をしみこませたハンカチがあるはずです。」
「ハッ」
昔泉は顔色をかえた。
「あせってミスを犯しましたね。」
「…あなたは私のポケットの中にハンカチがあることをなぜ…」
「理由ですか?それはですね。死体けんさの時私は手をぬらしてハンカチをかしてもらえるようにたのみました。その時あなたはポケットからハンカチを出したにもかかわらずたなの上のタオルをわたした…。
それがあなたの決定的なミスです。」
「そうですか。」
「それと私が警察の者だったことがあなたの何よりの不運ですね…さぁあなたをたいほします。」
講評:
トリックは、まあこんなものでしょう。
古畑(=古田)のセリフの書き方が上手でした。
by writingkids | 2003-11-04 11:12 | 長男「ササニシキ」のコーナー